
ここ2年ほど、冷凍野菜を購入したり活用するようになっている我が家です。
買い置きしておけば保存がきいて、下ごしらえの手間なく使えるので、野菜不足解消の強い味方になってくれます。
でも気になるのが、栄養のこと…
「冷凍すると野菜の栄養素が失われてしまうのでは?」
さらに2002年に中国産冷凍ほうれんそうから残留農薬が検出され、大きな社会問題となったことから、その安全性も気がかりなところ…
そこで冷凍野菜の「栄養量」と「安全性」について問題がないかを検証します。
冷凍野菜の誤解「栄養が減るイメージ」
私自身も「冷凍=栄養が減る」イメージを持っていたこともありますが、古いデータを少し覚えていたからです。
国民生活センターが1998年に調査した数字では、「ブロッコリー」と「ほうれん草」の一部の栄養素が減少しているという調査結果の報告がありました(※現在はエラーで閲覧不可。)
最新の研究報告では生野菜と同程度の栄養量あり
しかし2020年にもなると冷凍技術が発達し、最新の報告ではカリフォルニア大学の研究で「冷凍してもビタミン含有量は生野菜と同程度だろう」に変化しています。
The retention of nutrients was highly dependent on the commodity, but the majority of the commodities showed no significant difference between fresh and frozen for all analytes .
この報告をざくっと翻訳してみたものが下記。
生鮮食品と冷凍食品の違いを評価するために、トウモロコシ、ニンジン、ブロッコリー、ホウレンソウ、エンドウ豆、インゲン豆、イチゴ、ブルーベリーで4種類のビタミン(アスコルビン酸、リボフラビン、α-トコフェロール、β-カロチン)を分析した。
ビタミンCは8商品のうち5商品については有意差がなく、残りの3商品については生鮮品よりも冷凍品の方が高かった。
ブロッコリーとエンドウ豆は、それぞれ生鮮品と冷凍品で高かったり低かったりしたが、ビタミンB2含量に関しては、どの商品も有意な差を示していなかった。
β-カロチンは、ブルーベリー、イチゴ、とうもろこしでは有意な量は認められなかった。
エンドウ、ニンジン、ホウレンソウは冷凍品でβ-カロテンの含有量が低かったが、インゲン、ホウレンソウは2つの保存方法で有意な差は認められなかった。
全体的に、冷凍食品のビタミン含有量は生鮮食品と同程度であり、時には生鮮食品よりも高いこともあった。
ただし、β-カロテンは一部の商品で急激に減少していることが認められた。
栄養素によって減少しやすい成分がある
一般論的に生野菜と冷凍野菜を比べると、栄養素にどんな差があるのかを補足説明します。
ほとんど差がない栄養素
食物繊維・ミネラル(カリウム、カルシウム、マグネシウムなど)
食物繊維やミネラルに関しては、冷凍による影響があまり無いため、冷凍野菜と生野菜の差はほとんどありません。
冷凍野菜で減りやすい栄養素
水溶性ビタミン(ビタミンC、B群、葉酸)
冷凍によって栄養素が少なくなるわけではなく、冷凍野菜を加工する時に行われるブランチング(下ゆで)によって、水溶性ビタミンが水に流れ出し、若干減ってしまいます。
水溶性ビタミンの中でも、特にビタミンCは熱に弱いので、生野菜と比べると少なくなる傾向があります。
ただし生野菜でもブロッコリーやほうれんそうなど、ゆでてから食べるものは、同じように水溶性ビタミンは減少するため、冷凍野菜だから少ないということはありません。
冷凍野菜で減りにくい栄養素
脂溶性ビタミン(ビタミンA、D、E、K)
脂溶性ビタミンは油になじむ性質があり、水に溶けることがなく、熱にも比較的強いビタミンです。
そのため、ブランチングによる影響を受けにくく、栄養素の損失は少なくなります。
国民生活センターの調査によると、冷凍野菜(いんげん、枝豆、里芋、ブロッコリー、ほうれんそう)について、生野菜との栄養価をそれぞれ日本食品標準成分表の値と比較した結果、冷凍野菜の栄養価に大きな損失はなかったことがわかりました。
(国民生活センター実施「冷凍野菜の比較テスト結果」より)
本当に冷凍野菜の栄養素は減らないのか?事例1.ほうれんそうで確認
最新の海外研究では、冷凍しても栄養素の量は同程度だと考えられていますが、「日本でも同様なのか?」と気になります。
そこで、日本国内での数字の実例を紹介します。
出典の数字は、「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」からです。
冷凍ほうれんそうは、食べる前にゆでたあとを想定した数字。
食品成分 | ゆで | 冷凍(ゆで) |
---|---|---|
ビタミンA | 450μg | 720μg |
ビタミンE | 2.6mg | 4.4mg |
ビタミンK | 320μg | 480μg |
ビタミンB1 | 0.05mg | – |
ビタミンB2 | 0.11mg | 0.06mg |
ビタミンB6 | 0.08mg | 0.05mg |
ビタミンC | 19mg | 5mg |
ナイアシン | 0.3mg | 0.2mg |
ナイアシン当量 | 1.2mg | 1.5mg |
葉酸 | 110μg | 57μg |
パントテン酸 | 0.13mg | 0.03mg |
ビオチン | 3.2μg | 3.2μg |
ビタミンA:(レチノール活性当量)
ビタミンE:αートコフェロール
栄養素の量が多い項目だけで見ると、冷凍していない方が優秀。
しかし脂溶性のビタミン類は、冷凍品の方が1.5倍前後高い数字となっています。
冷凍品の方が劣るビタミン類は、水溶性のビタミンが多い傾向。
これは調理の工程が2回あることが「理由」です。
冷凍する前に、一度ゆでてから冷凍しています。
それを家庭で調理し、もう一度ゆでてから食べるという工程で、2回ゆでたことになっているからです。
野菜の種類にもよりますが、ほうれん草のように脂溶性のビタミンが多い野菜は、冷凍に適した種類だと考えることができます。
事例2.ブロッコリーのビタミンC保持率
ほうれんそうの事例で、ビタミンCが減少していることを紹介しましたが、もうひとつ別の事例を紹介します。
海外の研究で、ブロッコリーは冷凍することにより、ビタミンCを効率よく保持できているという研究。
冷凍することによりビタミンCの保持率は80%以上
ブロッコリー | ビタミンC含有量 | 保持率 |
---|---|---|
収穫直後 | 77.1mg | 100% |
冷凍直後 | 66.1mg | 85.7% |
冷凍12ヶ月 | 64.3mg | 83.4% |
※ビタミンCの数字は、下記の研究から引用し加工。
A comparison of the vitamin C content of fresh and frozen vegetables (生鮮野菜と冷凍野菜のビタミンC含有量の比較 )
引用元: A comparison of the vitamin C content of fresh and frozen vegetables
考察ですが、日本の研究でのほうれんそうと条件が異なる点は、「冷凍ブロッコリーを未調理でのビタミンC含有量」になることです。
簡単に表現すると、「自然解凍(または冷蔵庫で半日~1日で解凍)し、熱を加えていない未調理の状態」のビタミンC含有量。
そのため、実際はスープに入れる・レンジでチンした温野菜、など熱を加える調理がありますので、ビタミンCの含有量は80%以上もないと考えられます。
熱をなるべく加えない調理方法であれば、「60~70%程度」は保持できるかな?と個人的に考えています。
冷温で保存するとビタミンCの保持率は高い
上記と同じ研究で、ビタミンCは冷温で保管すると保持率が高いこともわかっています。
「常温保存の環境で、7日後には44%のみ、14日後には28%のみしかビタミンCが保持されなかった。」
On ambient storage of the fresh samples, when whole heads were put on store but 20-cm diameter florets analysed, a steady loss of ascorbic acid occurred with only 44% retained after 7 days and only 28% after 14 days. However, when stored at chill temperature, the retention of ascorbic acid was very good with no loss after 7 days; even after 21 days 80% of the vitamin remained.
引用元: A comparison of the vitamin C content of fresh and frozen vegetables
冷凍野菜の栄養価が高い3つの理由
冷凍野菜と生野菜の栄養価には大きな差が無いとわかりましたが、冷凍野菜のほうが栄養価が高い場合もあります。
なぜ冷凍したほうが、生野菜よりも栄養価が高くなることがあるのでしょうか?
その理由は大きく3つあります。
製造方法もポイント
冷凍野菜は収穫された野菜を選別・洗浄・カット等の加工をしたのち、ブランチングという加熱処理をします。
ブランチングとは、90℃~100℃くらいの熱湯につけたり蒸気にあてて、野菜を軽く下ゆですることで、野菜の酵素を不活化させて保存中の変質や変色を防ぐことができます。
ブランチング後に、急速凍結をおこない野菜の細胞を壊さず保存性を高める点がポイント。
【理由1】収穫後すぐに冷凍するから
普段買っている野菜は、収穫→貯蔵→運搬→スーパー・八百屋になど流通に時間がかかります。
野菜は収穫して時間がたつほどに栄養価はどんどん落ちてしまいます。
冷凍野菜は「収穫後すみやかに処理され冷凍加工」しているので、新鮮な野菜の栄養を保つことができます。
【理由2】旬の野菜を冷凍しているから
冷凍野菜は、旬の時期に収穫した野菜を使用しています。
野菜は「旬のものが一番おいしく栄養価も高い」といわれます。
例えば、ほうれんそうで比べると、旬の12月に採れたものは、旬ではない9月に採れたものより、ビタミンCが約3~4倍も含まれています。
季節はずれの生野菜より冷凍野菜のほうが、栄養価が高いことが多いのです。
※数字は食品成分データベースより
【理由3】急速冷凍で栄養素キープ
冷凍野菜など市販の冷凍食品は生産から販売まで-18℃以下で管理されています。
食品の組織がこわれて品質が変わってしまわないように、非常に低い温度で急速凍結することで、栄養素を失いにくくなります。
気になる安全性は?
栄養面と同じように気になるのが冷凍野菜の安全性。
安心して使うために、なんとなく不安に思っていることを解消していきましょう。
長期保存のために保存料は使われている?→使われていない
冷凍野菜は、保存料を使う必要がありません。
−18℃以下の低温で保存されているため、食品劣化や腐敗、食中毒の原因になる微生物や細菌は活動できないので、保存料などの添加物を使わずに長期保存することができます。
色鮮やかなのは着色料のせい?→無着色
家庭でゆでた野菜に比べて、冷凍野菜の色が鮮やかなので、もしかして着色料を使っているの?と思われるかもしれませんが、その心配はありません。
冷凍野菜は軽く下ゆでをするブランチング後に急速冷凍されているので、野菜の色素が変色することなく色鮮やかさがキープできます。
残留農薬は本当に大丈夫?→ポイントは選び方
国産野菜を使った冷凍野菜は、厚生労働省が定めた農薬の残留基準をクリアした野菜なので、残留農薬の心配はありません。
注意しなければいけないのは、輸入冷凍野菜です。
安全性を重視するなら、なるべく原材料が国産の冷凍野菜を選んだほうがいいですが、輸入冷凍野菜でも国内の基準をクリアしたものなら安心して利用できます。
安全基準のひとつである『冷凍食品協会認定証マーク』がついた冷凍野菜を選ぶようにすると良いでしょう。
〈冷凍食品協会認定証マークとは〉
“冷凍食品認定制度は、高度な品質・衛生管理体制で商品づくりを行っていることを証明する制度で、この認定証マークは、信頼の目安です。”
http://www.reishokukyo.or.jp/certification/certificate/
まとめ
冷凍野菜は冷凍室のスペースが必要という欠点があります。
しかしスペースの問題さえ解決すれば、おいしくて便利な食品。
忙しい時にほど冷凍野菜を上手く利用してみてください。
冷凍野菜は、急速冷凍によって栄養とおいしさを保ちます。 しかし調理の仕方によっては、栄養素を逃がしてしまったり、おいしさがダウンすることも… 栄養とおいしさをそのままキープしやすい調理のコツを紹介します。 解凍のポイント …
●参考URL
・輸入冷凍野菜品質安全協議会 凍菜協「中国食品問題の報道について」
http://tosaikyo.com/topics/chinese-food-news/
・独立行政法人国民生活センター「冷凍野菜の比較テスト結果」
http://www.kokusen.go.jp/news/data/a_W_NEWS_081.html(リンク切れ)
・日本冷凍食品協会「冷凍食品Q&A 冷凍食品の基礎知識」
http://www.reishokukyo.or.jp/frozen-foods/qanda/qanda1/
・ママテナ「冷凍した方が栄養価の上がる野菜は?」
http://mama.bibeaute.com/article/7681/
・セブンイレブンの冷凍ブロッコリーでも栄養は十分に取れるのか?(内科医のダイエット帳)
https://d-diet.com/565-2
・生鮮野菜と冷凍野菜のビタミンC含有量の比較 (英語)
https://ucanr.edu/datastoreFiles/608-97.pdf